それぞれの原体験の旅、人生が始まった『The Journey』。

2016年9月11日、『The Journey自分の生き方をつくる原体験の旅』発売記念スペシャルイベントとして、代々木にあるTABIPPOオフィスにたくさんの講師がやってきました。

時間が近づくと、オフィスにぞくぞくと人が集まり始めます。高校生から社会人、なかにはバックパックを背負い、いままさに世界一周してるのでは!?という風貌の人まで。約70名の生徒が、今日はどんな旅の話が聞けるのだろうと、期待に目を爛欄とさせていました。

今回のゲストは・・・

「人は誰もがアーティスト」というメッセージを掲げ、触れる人すべての独創性とクリエイティビティを再起動すべく、表現活動を続ける〈アーティスト・インキュベーター〉。 大手レコード会社のアーティストプロデューサーとして、7 度のミリオンヒットを創出した後、2010年にすべてを捨てて、オルタナティブな生き方と、インディペンデントな暮らしを自身の手でデザインすべく、学生時代からの夢であったニュージーランド移住を果たす。現在は、現地の原生林に囲まれた湖で、自給自足ベースの〝森の生活〟を営み、年の半分近くは、〈モバイルボヘミアン〉として世界中を旅する〝移動生活〟を送る。

東京学芸大学在学中に欧州一周や世界一周の旅を経験。帰国後にTABIPPOを立ち上げ、それ以来代表を務める。卒業後は大手WEB広告代理店である株式会社オプトに入社、ソーシャルメディア関連事業の立ち上げに参画する。入社2年目からの最年少マネージャーの経験などを経て、2013年11月に退職。TABIPPOを法人化して創業を果たす。TABIPPOは「旅で世界を、もっと素敵に。」を理念として活動。日本最大の世界一周イベント「TABIPPO2016 tabippo2016.com」や、日本最大の野外旅フェス「旅祭2016 tabimatsuri.com 」などを主催。2014年には旅のモノづくりブランド「PAS-POL」を立ち上げ、旅に出たくなる手帳「絶景手帳2015」、ウユニ塩湖日本初の本格写真集「UYUNI iS YOU」、「絶景ポストカード」なども発売。観光庁が主催する第1回「若者旅行を応援する取り組み表彰」にて奨励賞を受賞。

1988年大阪府生まれのゲイ。大学在学中の旅が転機となり、セクシュアリティをオープンにすることを決意。卒業後、新卒で(株)リクルートホールディングスに入社。ブライダル事業本部にて、大手結婚式場の集客・出店戦略のコンサルティグを担当。仕事に熱中する一方で、セクシュアルマイノリティとして社会で生きることの難しさを痛感し『やる気あり美』を発足。『人の意識を最も変え得るのはエンターテイメントだ』というポリシーのもと、「ちゃんと面白いけど、さりげなく多様なセクシュアリティへの理解が深まる」コンテンツをWEBサイトにて配信する。2015年3月にリクルートを退職し、現在はLGBT関連新規事業開発に従事。

1984年生まれ。兵庫県神戸市出身。北海道大学工学部建築年学科卒。大学進学にあたり北海道に住み始めたことがきっかけで、地元関西と全く違う地域の個性のおもしろさに気づき、日本国内をフェリーや鈍行列車、夜行バスなどで巡ることから一人旅を開始。20歳のときにフランスの村で遺跡修復のボランティアをした経験が、旅の可能性について考えるターニングポイントとなり1年間休学。建築事務所・農業で働きながら日本各地を、その後半年間に渡り世界各地を旅した結果「旅」「土地の魅力」「人」に関わることのおもしろさにハマる。「日本の各地の魅力や個性を生かし貢献したい」「人生を豊かにするきっかけを旅でつくりたい」という思いから旅行業に関わるべく、リクルートが運営する旅行メディア「じゃらん」に4年間、世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の東京オフィスにて2年間勤務。2014年旅をさらにおもしろいものにするヒントを求め、アメリカ・シアトルでリーダーシップ教育を行っているNPOにて経験を積み、2015年6月より地方の未活用不動産の再生に取り組むR.projectに参画。10月に日本橋横山町にて、日本の地域の魅力を発信することをテーマにしたホステル「IRORI Nihonbashi Hostel and Kitchen」を立ち上げのプロデューサーとしてオープンさせた。本業の傍ら、旅をテーマにしたライター業、イベントにも関わっている。

20歳から美容一筋でもがくも、25歳~28歳までオーストラリア、世界一周と海外でハサミを持って遊び呆け、貯金も職も家もなく再び東京へ。がむしゃらに3年過ごし、運良く30歳で恵比寿、代官山に接客はしない、お客様はいない美容室 Broccoli(ブロッコリー) playhair を立ち上げれた。32歳で(株)モテルを設立するも、愛犬からあげに溺れる。一生髪を切り続けたい美容師としての藤川英樹、ハサミを持たない藤川英樹をこれからどうプロデュースしていくのか。ただいま奮闘中。

今回の講義の内容は・・・

第一部で『The Journey』の著者・四角大輔さんとTABIPPO代表・清水直哉が聞き手となって迎えるのは、企業家・太田尚樹さん、美容師・藤川英樹さん、R.Projectプロデューサー・中尾有希さんの3人。3人は、旅人として『The Journey』に寄稿した方々です。

カミングアウトする

3人にマイクが渡され、まずは自己紹介から。1番右に腰かけた太田尚樹さんが最初に口を開きました。

「あの~、ボク、ゲイなんですけど」

本日の旅大学のメインパートの第一声としてのミスマッチさ、そして太田さんの独特の柔らかい喋り方が相まって、会場に笑いが溢れました。一気に70人分の意識を独り占めした瞬間でした。

ピースボートに乗って世界一周中に、仲良くなった日本人の女性に初めてゲイであることをカミングアウトした場面が、太田さんの寄稿文のなかで特に印象的でした。

ここでは、世界一周後に、恵比寿ハウス(TABIPPOにゆかりのあるシェアハウス)でTABIPPO代表の清水と出会ったことや、そこで仲間内に対してカミングアウトしたこと、さらに、現在の太田さんのフリーランスとしての活動のスタートにもなった、フェイスブックを通しての世界へのカミングアウトは、恵比寿ハウスで生まれたというエピソードなどを披露されました。

そのとき投稿した記事は、現在では「いいね!」が約3700にのぼるほど、大きな反響を呼びました。それは「まず心からはいって頭をつかって書かれたものだから」人々のこころに響き、リアクションが大きかったのだと四角さんは言います。

発信する

「頭からはいって美しく整えられたものが届くとは限らない。読み返して、ちょっと恥ずかしいなって思うくらいのやつの方が伝わるものだ」と、四角さん。

太田さんのようにフェイスブックを使って、しかし、ちょっと変わった発信方法をとっているのが美容師である藤川英樹さん。

藤川さんは、自身の美容室「Broccoli Playhair」を経営している美容師。店のコンセプトは「お客様はいない。接客はしない。」美容室。髪を切りにくる人をお客様として扱うのではなく、友人のようにあたたく迎えることこそがおもてなしだと、捉えています。

藤川さん自身は、その意志のもと、初めからお店をつくってきましたが、後からやってきたスタッフにそのスタイルをどう伝えればよいのか悩むこともあるそうです。そして、そんなときに使用するのがフェイスブックやブログ。メンバーへの想いや自分の仕事に対する在り方を、ウェブツールを通して伝えていて、その言葉は美容室のスタッフだけではなく、たくさんの人に届いています。

藤川さんが発信することを始めたのは、美容室開業に合わせてではありません。ブログは、世界一周に旅立つ前から始められたものです。世界一周ブログは、検索すればいくつもヒットしますが、そのどれもが「ただいま」の言葉を最後のエントリーに残して終わっているのだそう。「世界一周して、日本に帰ってきて、この人はどうなったんだ?」そう疑問に思っても、その答えは得られないまま。

藤川さんはブログを始めることにしました。「世界一周ブログをつくって、それを書き続ければ、だれかの後押しに繋がるかもしれない」ブログの存在は、他者の励ましであり、藤川さんにとってのプレッシャーになったそう。

「その頃って、自己ブランディングとか考えていたの?」と尋ねる四角さんに、首を傾げる藤川さん。「そういうのは考えていなかったけど、常に自分を見ている自分がいる感じはしました。それが良いプレッシャーでしたね」

ブログを始めた理由からも分かるとおり、藤川さんにはリーダーとしての気質が備わっていて、トップが格好いいからこそ、美容室には素晴らしいスタッフが集まるのです。「スタッフみんな、スゲー良い奴」という言葉にそれぞれが頷く中、清水が「いや、でも俺切ってもらったことないんだけど…」と白状すると、他の講師(全員関西人)が総ツッコミし、会場は爆笑。

自分のために、他人に説明をする
「R.Projectプロデューサー」という肩書をもつ中尾有希さん。地方の使われていない文化ホールや学校など、運営がされていないものをリノベーションして様々な活動の場として生まれ変わらせています。

大学では、建築学科に所属していた中尾さん。その後、日本各地と世界一周の旅に出た経緯から、「どうして今の仕事に就いているの?」と疑問を投げかける人もいるのだそう。確かに、中尾さんの経歴には様々な方向性があるように感じられます。しかし、中尾さん本人には、それがひとつの流れ、ごく自然なものとして受け入れています。

一見すると、中尾さんのプロフィールにはたくさんの、それぞれ違った特色のある出来事が詰まっているように思われますが、本人の感覚は「ただ自分のしたいこと、好きなことを突き詰めていっているだけ」なのだそう。

日本には、人がなにかをしていたら、その理由を追求したい、という風潮があります。そこから、多くの人が自分のしてきたことに対して疑問を投げかけるのだろうと中尾さんは分析しています。それを煩わしく感じるのは簡単なことですが、それをチャンスだと捉えられたなら。

「他人に説明することで、誰かの参考になれば嬉しい。それに、自分がしていること、したいことが説明することでより明確になって自分のためにもなる」いままでの経験を積み重ねて、いまの自分の大きな土台として成立させている中尾さんだからこそ、日常のちいさな他者のリアクションも自分の肥やしとして活用できるのだなと感じました。

原体験としての旅が
『The Journey』には、原体験としての旅が詰まっています。「日々の生活だと、変えられないものがたくさんある。旅って便利。とりあえず旅に出ちゃえばいい。そしたら出会えるから」自分の人生を、ぱっと動かすような体験。それが原体験。四角さんはそう考えています。

第一部の最後に、会場に来ている人、そしてこの本を手に取る人へ一言お願いします、と促されてそれぞれマイクを握りなおす三人。

ピースボートに乗った太田さんは「海の上、という特殊な環境のなかで、人生が激変するような何かがあったわけではなかった。でも、自分がこれまでで考えてきたことは明確になったかな」と語りました。続いて、「旅に出たら、人生の悪いとこ、良いとこがわかる」と述べた藤川さん。ふたりは世界に出て、視点を自分の内側へとより深く向けることができたのでしょう。

「私は旅に関わる仕事をしているので、これからも、旅は人生を豊かにするツールだということを伝えていきたいですね」と、語った中尾さんですが、既にそのツールの素晴らしさを会場にいる人々に伝えられていることは、そこにある表情たちを眺めれば分かりました。

スペシャルゲスト・高橋歩さん!

今回のイベント、告知が始まった時点では、講師は5人の予定でしたが、イベント当日の昼12時過ぎに緊急告知が行われました。

「高橋歩さんが、急遽ゲスト出演します!」

イベント当日は生憎の雨で、来場には不向きな天候でしたが、雨のおかげで高橋さんの出演が決定したので憎めません!(本来は別のイベントに出られる予定だったそうですが、雨のためにキャンセルに。そこで「旅大学、行くわ!」となったんだそう。さすが自由人!フットワークがとても軽い~!)

第二部では、高橋歩さんをお迎えして、3人でトークが繰り広げられました

高橋さんのフットワークの軽さは、大学時代からのもの。「友人たちとの間でサイババが本物かどうか討論になり、その場でインドへ数人で確かめに行くことを決め、翌日に金融機関で資金を調達し、4日後にはインドにいた。ついでに盛り上がるかなと思って坊主にもした」という仰天エピソードが飛び出しました。

ちなみに、サイババというのはインドの魔法使いのような人で、当時日本のメディアで大きく取り上げられていました。そのエピソードを「歩の人生が凝縮されてるなぁ!」と笑い飛ばした四角さん。「俺の人生、だいたいこんな感じ」と、高橋さんも頷きます。

このエピソードに表わされる、高橋さんの人生は、いつだって最初の「面白そう!」という盛り上がりを大事にしてきました。その場での盛り上がりなので、「ちょっと待って、考えてみてよ…」と頭を使いだすと、勿論、できない理由が山のように浮かびます。できない理由を考え出したら、途端に盛り上がった空気はしぼみ、体は動かなくなってしまいます。それを、高橋さんは本能的によく分かっているのです。

「ちゃんとしなくちゃって、俺だって思うのよ」
「嘘でしょ」と会場中がツッコミをいれたくなる発言ですが、そう言った高橋さん本人は至って真面目な表情。

「ちゃんとしなきゃって思うけど、そんなとき先輩が頭の中で言うんだよね…」
「先輩?」
「そう、マザー・テレサが『大きなことは、小さなことから始まるのですよ…』って」

事業が波に乗って、それを大きくしたいという欲望が生まれたとき、うまい具合にまとまろうとしたとき、彼の中の織田信長やボブ・マーリー、チェ・ゲバラが囁くのだそう。「ちっちゃくまとまんなよ!」

そして、いくらお店や会社が軌道に乗っていても、それを譲り、まっさらな状態でまた「面白いこと/やりたいこと」に向き合うのが高橋さん。妻・さやかさんとの間では、1年ならいくら貧乏でも我慢する、という「1年ルール」が起用されているそう。本では、高橋さんのさやかさんに対する愛情が溢れていますが、さやかさんの高橋さんに対する愛情も感じられました。

旅、そして自分の仕事について語る四角さんと高橋さんを見つめて、清水が言います。「周りの大人は、「大人になったら人生おわる」って言ってたけど、自分より年上のふたりを見るとスゲー楽しそうで。まだまだ楽しめるって思える」そのことが世の中には知れれていない、と清水の表情からは悔しさも感じ取れそうでした。

参加者からの質疑応答の時間では、こんな質問が投げかけられました。
「親の期待に応えて、進学、就職としてきたけれど、本当はインドでヨガを学んでインストラクターになりたい」

今の道から逸れる、その一歩を踏み出すことをためらっている彼女に対して、四角さんは「やればいいじゃん」と少々厳しい口調で一言。四角さんは、彼女の「背中を押して欲しい」という質問の奥にある真意を見抜いていました。お父さんである高橋さんは「親は、幸せになって欲しいから、色々言うんだよね。いまの状況で幸せじゃないなら、それを望んでいるはずがない」と、質問者の親の視点でアドバイスをされました。

最後に、四角さんが語りかけます。「今、物凄く勇気を出して質問してくれたでしょ?緊張して震えてるよね?どうか、今のその震えが消える前に行動してほしい」

質問者だけではなく、その会場にいた全ての人にとって、このイベントが新しい挑戦の第一歩となるような力強い言葉でした。

おわりに

イベントの最後には、本日の講師によるサイン会が催されました。真新しい『The Journey』を抱えたひとりひとりが、今日の旅大学の感想を熱い口調で講師に話す姿が続きました。

それぞれの旅が、原体験となりその人の人生を作り、そこから生まれた言葉に背中を押された人が、旅立っていく。こうやって、旅は続いて行くのでしょう。

今回のライターは・・・

TABIPPO専属ライター・ブロガー。鹿児島県出身。学生時代は家族と哲学について学び、卒業後はセブ留学へ。Webメディアへの寄稿を経て、帰国後は文字媒体の仕事をしていくことを決意。現在はTABIPPOで旅に関する記事執筆と個人ブログを運営中。好きなことは旅と映画と睡眠で、将来の夢は鹿児島県観光大使でテーマパーク評論家。http://ohta6322.hateblo.jp/