135の国と地域を訪れた写真家、竹沢うるまさんが考える「旅情」とは?

11月12日(日)に旅大学の講座:「旅を深める」135の国と地域を訪れた写真家と一緒に「旅情」を楽しむがTABIPPO代々木オフィスで開催されました。ゲストは、135の国と地域を訪れた写真家の竹沢うるまさん。世界中で撮られた写真をスクリーンに映ながら、イベントは進んでいきました。

会場は満席!終始アットホームな雰囲気で、うるまさんの面白い話に何度も笑いに包まれました。「自らの感情の赴くままに」という言葉がとても印象的だったイベントの様子をどうぞ。

 

まずは全員自己紹介!

今回のイベントは少し緊張した空気がありましたが、まずは全員起立して3名のグループに分かれて自己紹介が始まりました。次第に皆さんの顔から笑顔がこぼれます。やっぱり、旅という共通の趣味があると話が盛り上がりますよね!

もう1ラウンドして、周りの人のことを知ったところで、本日の講師、竹沢うるまさんの登場です。

  

うるまさんが写真家になるまで

うるまさんは、学生の頃出版社で働き、写真に関わりはじめました。20代の頃は、ずっと水中写真を撮り続け、私たちが知る南の島はほとんど潜ったとのことです。パラオ、バハマ、オーストラリア、エジプト等、1年のうち3分の2は海に潜って撮影していたとおっしゃっていました。

ただ、水中撮影はそんな簡単な世界ではなく、ダイビングで何度も鼓膜が破れながらも、水中に潜らないといけなかったり、何時間も漂流したりしたそうです。

 

うるまさんは、なぜ世界103か国1021日という長い年月を旅に費やしたのか?

26歳でフリーランスになってからも定期的に仕事があったのですが、どこか人に言われながら写真を撮っているという感覚があったと言ううるまさん。

30歳の頃、今の自分の写真は純粋な行為ではなくお金に換算する行為になっていると考え始め、1度水中から離れて、もっと広い世界を見てみようという考えに至ったそうです。

2010年3月28日、32歳のときに、最初は半年、南米に行くつもりで旅に出たうるませさん。ところが、そもそもなぜ半年なのか?なぜ南米だけなのか?と周りから言われると、結局気づけば1021日に。旅の期間に対する理由を聞くことは愚問なのかもしれません。

 

うるまさんが考える「旅情」とは

そんなうるまさんは時折人生の転機になった写真を何枚か紹介しながら、「旅情」について語ってくださいました。今回のイベントのテーマでもありますが、みなさんにとっての旅情とは何でしょうか?

うるまさんがいう旅情とは目に見えない感覚で、それは、自分自身を通した世界の経験、自分自身にとっての印象的な出来事です。例えば個人的な出会い、その辺の街角や商店のおじさんのやさしさも旅情に含まれます。

続けて、うるまさんは、「絶景」を否定するわけではないが、と前置きして、旅情は絶景の反対語と捉えているといいます。全員に共通する絶景はなく、順位付けできるものでも客観的に定義できるものでもない。

絶景の写真を見せられても、そこに自分の感覚が介在しない。そこに人々の生活が見えない。自分にとっての絶景は自分自身で決めるべきであり、周りの人ではなく、自分が何を感じているのか。人の旅をなぞるのではなく、自分の旅をすることの大切さを語って下さいました。

 

目に見える世界と目に見えない世界

そんな旅情の話の1つに、ペルーで10日以上かけて会いにいったシャーマンの話をしてくださいました。シャーマンとは、こちらとあちらの世界を繋げてくれる人のことで、肉体と精神を治療してくれるお医者さんのことだそうです。

うるまさんは、ここで目に見えるもの(肉体)と目に見えないもの(精神)を知ったといいます。旅情の話でもありましたが、目に見える世界は絶景で目に見えない世界は旅情だとのこと。世界はこの2つで成り立っているとおっしゃっていました。

 

その人が存在する場所が世界の中心

旅人と話をしていると、1番良かった国は?とよく聞かれることが多いそうですが、うるまさんの中では1番というものは無いとのこと。良し悪しで世界をとらえると、とても窮屈になってしまい上下関係ができてしまう。この順位付けと同じく、どこが中心でどこが僻地というものはないのです。

うるまさんは、ニジェール北部サハラ砂漠の南部にいた、水を求めながら塩を運ぶ旅をする人々に出会ったときのことを話してくださいました。現地の人々は日本という単語を知らないので、「日本?それは食べれるの?」と聞かれたそうです。

その人が存在する場所が彼らにとっての世界の中心の中心であり、彼らのイデオロギー、文化、伝統が世界の中心であったことに気づきました。

同様に、秘境というものは無く、彼らにとっては、私たちが秘境の対象であること、絶対的な秘境は存在しないということです。

 

うるまさんが旅した国々

限られた時間の中で、素敵な写真と共にトルクメニスタンの国境のお話、イランの交通のお話、レバノンのラクダ市場のお話、キューバのバハナは時間が止まっているという話、シリアの沈黙の修道院のお話、ベネズエラの国境で200ドルを請求された話、エチオピアからケニアの世界最悪の道の話など、世界中を旅したお話をしてくださいました。

もちろん、ここでは全て語れませんので、続きは、是非うるまさんの本を手にとって見てください。

 

旅をして変わったことや、写真を撮影するときに意識していること

最後に、会場にいらっしゃる皆さんからの質問に答えてくださいました。

Q旅をして変わったことは?
物事に執着しなくなった。過去や未来にしばられなくなった。
そもそも、過去や未来にとらわれても意味が無く、過去は今の積み重ねからしか生まれてこない。旅はその瞬間瞬間の「今」の積み重ね。

振り返ると、自分が歩んできたルートがある。
旅の中で、未来はない。なぜなら、計画も予定も全て覆されるから。

Q.カメラを向けるときに、どんなことを考えるか?スタイルはあるか?

感じたものをそのまま写真に写すように、自分の心とシャッターを近づけること。
実際に写真を撮るときは、考えない。考えたことは飽きる。本当に純粋なものは、感じたこと。そのまま写真に写ればよいなと思っている。

写真というのは、そういった旅情がそのまま写るものであってほしい。旅情が極力写真に写るように。だからこそ、機材も極力シンプルでいきたい。カメラに縛られないように。

その他、旅の珍道中として、35年旅していた人にエジプトのカイロで出会ったことや、その人が日本に帰国する日に同じドミトリーだったが、朝うるまさんが寝坊して見送りに行けなかったこと、好きな女の子や感情移入してしまうと写真を撮れなくなってしまうこと、現地の方々と仲良くなる方法としては、自分がいかに自分という状態でいるか、違いを認めた上でお互いを尊重するという心の持ち方が大事だという話をされていました。

 

イベントに参加してみて

自らの感情の赴くままに」そんな言葉に、会場全体が包まれた気がしました。旅の行先や期間は自らの感情の赴くままに自身が決めること。誰かが敷いたレールに沿って歩むのではなく、目に見えない自身の「旅情」に身を委ね、自分自身が旅(人生)を創っていく。

旅をして「過去や未来にとらわれなくなった」といううるまさんの話は、旅だけではなく人生そのものを歩む上で「今」を大切にするということを感じました。